当研究室は、骨代謝と免疫学の融合領域である骨免疫学の研究を推進しています。特に、骨を吸収する破骨細胞や免疫細胞の分化メカニズムをゲノムワイドなスクリーニング法や遺伝子改変マウスを用いて解析し、関節リウマチや骨粗鬆症などの疾患治療への分子基盤の確立を目指しています。分子生物学から臨床応用研究まで幅広いテーマとメンバーで研究を行っています。 現在の研究テーマ 1. 転写因子NFATc1の機能・転写制御機構の解明 われわれが同定した破骨細胞分化のマスター転写因子NFATc1は、破骨細胞の分化過程において他の細胞では見られないような自己増幅機構を経て、mRNAレベルが激しく増加します。 細胞運命の決定機構のモデル系として大変興味深い現象であり、この機構を明らかにすることで分化決定機構の一端が明らかになると考えて取り組んでいます。 特に、質量分析を用いた結合タンパクの同定など、新たな制御機構の同定を試みています。 2. サイトカイン誘導遺伝子のトランスクリプトーム・プロテオーム解析 NFATc1の同定には、破骨細胞分化因子RANKLによる誘導遺伝子のトランスクリプトーム解析が大きく貢献しました。しかし、RANKLによって引き起こされる細胞内のイベントの多くはまだわかっていません。 RANKL等のサイトカインによって誘導される遺伝子を、mRNAあるいはタンパクレベルで網羅解析を行うことで、未知のシグナル伝達経路を解明しようと試みています。 この手法はRANKL以外のサイトカインや種々の刺激に対する細胞応答の解析に応用していく予定です。 3. 免疫受容体による骨代謝制御機構 最近、われわれは免疫グロブリン様受容体が骨代謝の制御で重要な意義を持つことを明らかにしました。 ITAMおよびITIMシグナルによるペア型の免疫受容体は、免疫細胞の制御で重要な役割を担っていますが、意外にも骨代謝においても大変重要な意義をもっていました。 しかし、これらの受容体のリガンドを含めた詳細な機能解析は、これからの課題です。骨吸収細胞と骨形成細胞の相互作用(カップリング機構)の解明を目指して解析を進めています。 4. RNAiや遺伝子改変マウスを用いた遺伝子機能解析 網羅解析や結合タンパクの解析によって同定された遺伝子の機能に関しては、siRNAを用いたノックダウンやウイルスベクターを用いたプライマリー細胞への遺伝子導入を積極的に取り入れin vitroの解析を行っています。 もちろん、最終的な生体レベルの意義を明らかにするためには、遺伝子改変マウスが不可欠です。 トランスジェニックマウス、コンベンショナルなノックアウトマウスだけでなく、コンディショナルノックアウトマウスの手法を積極的に取り入れて細胞特異的なloss of functionの解析を進めています。 5. 病態モデルを用いた治療応用の検討 細胞内シグナル伝達経路の研究の重要性は単に科学的な意義だけではありません。 この中から、新たな治療標的分子を見つけ、分子標的治療のモデル実験を行うことで、創薬への手がかりがつかめます。 関節リウマチや骨粗鬆症のモデルマウスに対して、siRNAやウイルスベクターを用いた治療実験を行うことで、基礎研究にとどまらず臨床応用を視野にいれた研究を推進しています。 |